甘やかし婚   ~失恋当日、極上御曹司に求愛されました~
「とりあえず個室で少し休め」


そう言って、彼は私の顔をそっと覗き込む。

眉尻を下げ心配そうな表情を浮かべる彼は、つい先ほどまで厳しい発言をしていた人とは到底思えない。


「重いでしょうからおろしてください」


「俺よりずいぶん小柄なお前が重いわけないだろ。むしろ軽すぎて心配になる」


素っ気ない、それでいてどこか優しさの含んだ返答に体がカッと熱をもつ。

そっと私の体を自分のほうへ引き寄せ、響谷副社長は足を進める。

ワイシャツ越しに伝わる体温と鼓動に、なぜか鼻の奥がツンとした。


「……酒に弱いなら、コーヒーを飲むなよ」


呆れたような口調の中に滲む微かな心配、私を運ぶ腕の力強さと優しさになぜか胸が苦しくなった。


* * *
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