郁さんの来訪の翌日、営業課から正式に響谷ホールディングスとの新事業に参加するよう要請された。

私事が絡みすぎではと上司に掛け合ったが、上層部と響谷副社長が話し合った結果らしい。


「今まで営業企画に一切関わっていない私が参加するなんて不自然すぎるでしょ」


「沙也が響谷副社長に呼び出された事実を誤魔化すためでもあるのよ」


上司から私への説明を指示されたという親友が肩を竦める。


「それに私と佐多は元々この事業計画に沙也の力を借りようと思っていたのよ」


ねえ、と塔子が自身の右隣に座る佐多くんに同意を求める。

現在私たち三人はそれぞれの上司の許可を取り、営業企画会議と称して会議室にいる。

会議室正面に対して平行に二列並ぶ机に、向かい合って腰を下ろしている。

塔子から、出会いを含めた副社長と私の馴れ初めを聞いたらしい佐多くんは、終始苦虫を嚙み潰したような表情を浮かべていた。


「とにかく驚きすぎてなにを話せばいいか迷うが……倉戸は騙されていないんだな?」


「騙す相手の勤務先にわざわざ来ないでしょ」


「でもあの響谷副社長がひとりの女のためだけに動くなんて、ありえないだろ」


ガシガシと髪を乱暴にかき上げて、佐多くんが困惑したように塔子に話す。

予想以上に彼の来訪の影響は大きかったらしい。

副社長の口止めにより、上層部と佐多くん、塔子以外は私が婚約者とは知らないので、彼の来社目的がわからず営業課は右往左往していたそうだ。