もう一度、その声が聞きたかった【完結】
09:最悪の事態
東京で会議があった日の夜
勇人の家に泊まりにきていた。

会議は第1金曜日だから
次の土曜日は休みにして東京に1泊する。

シフトは店長の私が作るので少し融通がきく。
日曜日を遅番にすれば完璧だ。

本社勤務の彼は、基本土日が休み。
1日だけでもゆっくり2人で過ごせる。

数週間ぶりにあった彼は
やはり私の変化に気付いたようで

『さくら、顔色良くないな。
目の下のクマもひどい…。』

ベッドに並んで横になると
彼が私の目元に触れながら心配そうに見つめる。

「うん、ちょと寝不足でね。
韓国ドラマにハマっちゃって。」

とっさに嘘をついてしまった。
少し無理がある嘘だったが
彼は微笑み返してくれた。

『あぁ、今また流行ってるんだよな。
仕事も大変なんだから、ほどほどにしろよ?』

「うん、気をつけるね…」

『今日はゆっくり休もう、おやすみ』

「おやすみなさい…」

彼が私を抱きしめながら目を瞑る。


胸が痛むが
圭介と再会してまたあの夢をみて
寝不足だなんて話せなかった。

(ごめんね…)
心の中で彼に謝った。

私は彼の鼓動や温もりを感じて
吸い込まれるように眠りについた。
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