日直当番【完結】
「だから触るなと言ったのに」

 タンポンで血と消毒液を拭きながら言った。

「それって『危ないから僕が片づけてあげたのに』って意味?それとも『あなたがやると余計に仕事が増えます』って意味?」

「後者です」

 即答だった。

「ちょっとは気ぃ使ってよ」

「あなたの問いに正直に答えただけです。そもそも、普通はガラスの破片を手でかき集めたりしないでしょう」

「進藤くんは親切にしたいの?憎まれ口叩きたいの?」

「憎まれ口?叩いたつもりはないのですが」

「私のこと馬鹿にしてんの?」

「馬鹿にしたつもりもないのですが」

 進藤くんは目だけ上げて口の端に笑みを浮かべた。その顔がいかにも私を馬鹿にしているように見えてムカッと来た。思わず進藤くんのスネを蹴ってしまった。

「っ!!?」
 進藤くんは声にならないうめき声を上げてその場にうずくまった。

「なんですかいきなり!僕が何かしましたか!?」

 進藤くんは眉根を寄せて、悲痛な面持ちで私を見上げた。

「あんたのその顔がムカつくんだよ!」

 ―――ガラガラ。

 あ、池上先生。

「おーい日直終わったかー?えぇ!?何これ!?」

 先生の視線の先には風通しの良い吹き抜けの窓があった。5月の爽やかな風が教室の中に吹き込んでいた。
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