日直当番【完結】
「神崎さん、何か忘れてないかな?」

 朝のSHRのあと、池上先生がニコニコしながら私の机の前にやって来た。その笑顔に裏を感じてゾクッとする。

「何かって…あ」

 小論文。

「今日の放課後までね。神崎さんひとりだけだよ」

「はぁい…」

 あのあと放心状態でそのまま家に帰ってきたもんで、小論文ことはすっぽり忘れていた。もとはといえば進藤くんが…。じろりと斜め後ろの進藤くんを睨むと、進藤くんはすぐに気づいて目が合ってしまった。ドキッとして目を逸らし、勢いで机に額を打ち付けた。

「何やってんだおまえ」

「みなかわぁ。私を哀れな女だと罵ってくれぇ」

「は?ああ、小論文のことか?ちょっとならアドバイスすっぞ?」

 違うよ皆川。そっちじゃないよ。でもせっかくだから教えてくれ皆川。

「なんか喋れよ」

「今テレパシー送ったでしょ。今は声も出す気力がないの」

「そんなにヘコむことか?」

 だからそっちじゃないって皆川。

 昨日は進藤くんの裏の顔を見てしまったような気がした。あんなの、絶対反則だ!!何が仕返しよ!乙女心を弄びやがって!真面目なふりしてただのエロ魔人じゃないか!!
< 23 / 120 >

この作品をシェア

pagetop