日直当番【完結】
「今一瞬目泳いだよねぇ。あやしい~」

 彼女は目を細めて私の顔を覗き込んできた。

「私そういうの嫌いなんだよね。あーうざいうざい」

 私は「シッシッ」と手で追い払う仕草をした。

 理科実験室はまだ開いていなかったのでドアの近くの壁にもたれかかった。

「私は男じゃないから分かんないけど、濡れた服着て中身スケスケの女の子と家でふたりきりになったらドキドキするもんだと思うよ。あわよくば…なんて考えちゃうかもしれない」

「でも進藤くんに限ってそんなことはないっしょ」

「進藤くんだって年頃の男の子よ。なんとも思わないわけないじゃないの。心の中では結構ドギマギしてたんじゃないかなぁ」

『僕も年頃の男子です。あなたに分からないことはいろいろあります』

 え……もしかして進藤くん………。

「進藤くんて何考えてんのかよく分かんないけどね」

「ああ、うん、たしかに」

 私は「ふぅー」とひとつ長いため息をついた。マスクの中だけ異常に湿度が高い。朝よりものどの痛みがひどくなったようだ。

「それにしても進藤くんて意外と優しいとこあるよね。いろいろお世話してくれたんじゃん」

「お世話とか言うな。まぁでも意外といいやつかもね」

「なになに惚れたりして~?」

 由理は怪しく瞳を輝かせながら私の肩をつついた。
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