「わがまま言わないでよ。もう僕行かなきゃいけないところあるから」




「えー!!三月先生の意地悪っ!!」




そう顔を膨らませて、怒る姿を見せるのは愛川みな(あいかわ)。この高校のマドンナでもあり、女子生徒でもある少女。



憎らしいけどどこか愛らしい。





学年は高校二年生。




規則違反のはずなのに腰まで伸びるそのストレートな金髪は絹のように美しい。唇には真っ赤なルージュ、目元はぱっちり二重で鼻筋が通る美少女といっても過言ではない。





「じゃあ、僕保健室に用があるからさ。じゃあね」




「もう、次は絶対に離さないんだからーっ!!」






これでもやっと目をかいくぐって、女子生徒達から逃げてきた筈だ。なのに、この愛川さんと来たら、僕の事を追いかけ回して待ち伏せをしていた。ほんと、ビックリだよ。






あ、はじめまして。僕ここの教師をしています。三月あやと(みつつき)と言います。





ごくごく普通の教師……と言いたいところだけど……ご覧の通りしょっちゅう女子生徒に僕は何故かちょっかいを出されてしまうまだまだ青い教師。






もう教師になってから十年ぐらい経ったというのに、まだ追いかけ回されるなんて事が多々あるんだ。



十年前の二十代の頃に比べればまだまだ比じゃないけれど。




二十代の頃なんて自慢じゃないけれど女の子が周りにたくさんいて仕事もままならないって事が沢山あった。




「きっと普通の人より以上にモテてしまうという能力があるんだよ」って親には笑いながらよく言われる。






そういえば僕は小さい時からそんな体質だった。気付いた時には、周りに沢山の異性がいたなんて事がある。だけどとても気持ちがいいものとは言い難い。





だって女の子はみんな怖い一面を持っているでしょ?そうじゃなければ、不倫のドロドロしたドラマなんてきっと生まれてなんてないし。




今の愛川さんだって僕に近づいてきているけれど、彼女もきっと何か考えてるよ。だって容姿からしてそんな立ち振る舞いだし何より目が怖い。




そんな事を話したとしても、先輩の先生達からは「考えすぎだよ」なんて返ってきて話にならないけれど。