ゆるふわな君の好きなひと

「起きてたの?」

「寝てた。けど、青葉の気配がしたから今起きた」

 陽だまりに溶けてしまいそうな表情(かお)でふにゃっと笑いながら、由利くんがそんなことを言う。

 いつだってゆるゆる、ふわふわしているように見える由利くんの言葉は、冗談なのか本気なのかよくわからない。


「帰る準備しないの? 今日からテスト週間だから、部活休みでしょ」

「あー、そっか。だから今日、晴太(はるた)なかなか来ないんだ」

 由利くんが、パチクリとまばたきをする。


「もしかして、今日からテスト週間ってこと知らなかった?」

「そういえば、学校来るとき晴太が言ってたかも……?」

「かも……、じゃないよ。いつも眞部(まなべ)くんに頼りすぎじゃない?」

「大丈夫。晴太はおれの保護者だから」

 由利くんが緩くパーマのかかった薄茶の髪を揺らしながら、ふふっと誇らしげに笑う。そんな彼は、わたしの制服のスカートを未だにつかんだままでいた。


「由利くん。わたし、帰っていいかな?」

「圭佑ー」

 由利くんにつかまれているスカートを引っ張っていると、廊下から声が聞こえてくる。

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