ゆるふわな君の好きなひと


「何してんの? ここ、おれの場所」

 あきらかに機嫌の悪そうな低い声。それは女の子達の前でふにゃりと笑っている由利くんのイメージとは真逆で、ちょっと怖い。

 それに……。おれの場所って何なんだ。

 保健室は生徒みんなのための場所なのに、突然現れて、このベッドがおれのだと主張されても困る。

 先客はわたしだ!


「ごめん、でもわたしが先に寝てて……」

 謝罪の言葉を入れつつ、わたしも自分の権利を主張する。

 だけど、ベッドの横で上履きを脱いだ由利くんは、わたしの言葉を無視して勝手にベッドに潜り込んできた。


「え、ちょっと」

「言ってんじゃん。ここはおれの場所だ、って」

 わたしの横に寝転んでしっかりと掛け布団をかけた由利くんが、ベッドを半分陣取る。


「でも、わたしが先に寝てて……」

 肩を揺すってベッドから追い出そうとするけれど、わたしから枕を奪って寝やすいポジションをとった由利くんは、既に目を閉じて眠りにつこうとしていた。


「ちょっと、寝ないでってば!」

 両手で肩をつかんで激しく揺さぶると、由利くんが迷惑そうに薄っすらと目を開ける。

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