手の中の銀貨を、チャリンと鳴らし、フードの奥から、予言師は、その赤銅色の瞳で、エレナの目の奥のさらに奥を覗き込んでくる。

「ふーん。あなたの隠された色は、美しいですね」

(あ、ホンモノだ。この人)

 心の奥底まで覗き込まれたように錯覚した直後、強烈な魔力の流れと、何かが引き摺り出されるような錯覚に、冷や汗が流れる。

 長い時間が、過ぎたように思えたが、実際にはほんの刹那だったのかもしれない。予言師は、人の不幸を悪気もなく外野から楽しんでいるように、屈託ない笑顔を見せる。

「これは、珍しい。運がいいですね。間もなく出会う男性は、あなたと最高相性です」
「えっ、本当に?」

 意外にも良さそうな予言に、エレナは、期待に胸を膨らませる。

「ええ、確かに最高相性です」
「……わぁ」

 それと同時に、さっきのは、気のせいで、やっぱり偽予言師に違いないと、エレナは結論づけた。

(だって、ごく平凡な私に最高の相性の人なんて、現れるわけがない)

 愛とか恋には、興味あるけれど、あくまで素敵な人に憧れによく似た恋心を抱くのがやっとだ。

 途端に冷静になったエレナは、細い少しウェーブのかかったくすんだ水色の髪を耳にかけ、丸いメガネに隠されたグレーがかった瞳を細めた。

 途端に胡散臭く見えてきた笑顔。そんなこと、どこ吹く風といった様子の偽予言師は、予言を続ける。

「お相手の身長は高く、剣の達人です。あなたと彼の職場は相性が最悪で、いろいろ苦労するかもしれません。いや、確実に、苦労します。まあ、それでも、趣味趣向から好みまで、相性は最高ですから、きっと、荒波ばかりの運命も乗り越えられますよ」
「……なんだか、あまり良いところないですね」

 荒波ばかりとか不安しかない。そして、お相手の選択肢が、どんどん狭まっている気がするのは、気のせいだろうか。

「えっ、そうですか? 体だって、心だって、何にしても相性は大事ですよ。あ、因みにお相手は、銀髪に金の瞳です。それから、好みのタイプはあなたみたいな、美しい髪と瞳を持つ人です」