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 爽やかな小鳥のさえずり。そんな美しい音を聞きながら、目覚めるのはどれくらいぶりだろうか。
 エレナは、うっすらと目を開けて、しばらくその音に耳を澄ます。

 王都には、鳥のさえずりがないと、弟は言っていた……。

「シリル……」

 それは、懐かしい故郷を思い出させる音階。
 美しい緑の木々に囲まれた、幸せな日々だった。
 そして同時に、エレナにとって、どこまでも暗く悲しい思い出でもあった。

(まあ、時々この外見のせいで石を投げられたりもしたけれど)

 それすら、エレナにとっては、目を逸らすことができないほど眩い思い出だった。

 そして、その感傷を振り切るように、特賞のフェンリルのぬいぐるみ、その銀色の毛並みにエレナは頬を寄せる。
 昨晩と同じように、フワフワ上質な感触なのに、なぜか今朝は温かく、エレナの気持ちは緩やかに昂るようだった。

「あー、目が覚めたか」
「――――はい、最高の毛並みでした。…………へあ?」

 目覚めて、もう一度擦り寄った瞬間、困惑したような声が頭上から響く。
 エレナが枕から顔をあげると、金色の瞳とバッチリと目が合った。