「……どうした? そんなにこちらを見て」
「いっ、いいえ!」

 ほんの少しとはいえ、住む世界の違うお方との恋を想像してしまい、火照ってしまった頬を、両手のひらで冷やす。冷やしながら、これは危険だと心の奥底で警鐘が鳴る。

「なんでも、ないです」
「そんな赤い顔をして、具合でも悪いのか?」
「本当だ! 大変ですっ、少し休んだほうがいいのでは? エレナ殿」

 真剣な表情でそんなことを言う二人。
 二人が並ぶと、人外に近い美貌を持つレイと並んでも遜色ないほど、ジャンが可愛い系の美男であることに改めて気がつかされる。クルリと大きな二重に、まだ幼さの残る顔、癖のある赤みを帯びた薄茶色の髪、すべてが可愛らしい。

 こんな風に、人懐っこくてかわいい中型犬は、王立騎士団にとっては仮想敵国と表現しても過言ではない魔術師ギルドに、単身で乗り込んでしまう無鉄砲さを併せ持つ。

(レイ様よりもリドニック卿が、命の危機というほうが納得がいく気がするの……)

 まあ、二人は上司と部下で、歴戦の騎士だ。たまたま今回、別行動だったらしいジャンは無事だっただけで、二人とも危険に陥る可能性もある。

(それは……すごく嫌。そういえば、ギルド長は休みを取れ、受付には出せないと言ったけれど、魔術師ギルドに来てはいけないとは言わなかったわ。職員しか入ることができない書庫に、予言に関する書もあったはず)

「――――レイ様、助けていただいた恩、決して忘れません」
「……急に、どうした」
「用事を思い出したので、帰ります」
「……エレナ嬢。単独行動は推奨しない」

 キョトンと、スミレ色の瞳がレイを見つめた。
 なぜか、その瞳があまりにも無防備に見えてしまい、レイのいら立ちを掻き立てる。