「魔術師ギルドで調べ物をするだけですから」
「そ、そうか……。だが、もし良かったら、ここには魔術師ギルドに引けを足らないほどの、魔術関連の書籍がある。私的なものだが、古代魔法から、現代の最新研究論文まで、たぶん王都でも有数の蔵書だと思う」

 なぜか、急にとても早口になって、エレナに屋敷の蔵書について語るレイ。
 どこか必死さを帯びたその言葉につられるように、エレナは思わず口に出す。

「――――予言に関する本があるのなら、見たいです」

 その瞬間、レイの顔色が、明らかに変化した。
 一瞬にして血の気が引いたような、その変化をエレナは茫然と見つめる。

「予言……。どうして」

 そんなレイの問いに、まさか恋の予言について本当のことを言うことなどできない。
 でも、嘘を言うこともできなかった。
 だから、エレナは、ギルド長とアーノルドにしか話したことがない、もう一つの真実を語ることにした。

「……うーん、実は今はいない私の家族が巻き込まれた事件は、予言が関係していそうなんです。それに、少し気になることもあって……」
「――――そっ、そうか。……辛い思い出を、無理に聞き出してしまったようだな」

 エレナの境遇を聞いたレイは、申し訳なさそうな顔をしながらも、明らかに顔色が良くなった。
 その変化に、ギルドの受付係をしているエレナの経験が、違和感を感じさせる。

(明らかに、安堵した。どうして……? レイ様も、何か予言に思うところがあるの?)

「――――予言に関する蔵書は、王都で一番多いかもしれないな」
「珍しいですね」

 ちらりと、練武場に目を向けると、話に全く興味がないらしいジャンが、素振りをしていた。
 この話を、聞いてはいなかったらしい仕草に、どこかエレナはほっとした。