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 鐘の音が聞こえる。それは、戦いの勝利を祝う、パレードが始まる音だ。
 パチッと音を立てて、瞳を見開いたエレナは、勢いよくベッドから体を起こす。

「――――っ。痛ったぁ……」
「急に起き上がるんじゃない。強く頭を打って気を失っていたんだから」

 ひどく痛む後頭部に手を触れると、明らかに腫れているのが分かる。

「ギルド長……。どうして、ここに?」

 周囲を見回してみると、確かにここはエレナの部屋だった。
 順に思い出してみても、エレナの部屋にギルド長と一緒にいるなんてありえない。

「確かに、業務に参加するのを禁じたが、まさか単身で城門の外に出てしまうとはな。……ああ、心配するな、アーノルドが直接この部屋に連れ帰ったから、お前が外に出ていたことは広まっていない」
「そうですか」

 口の中を舌でまさぐれば、下の奥歯に仕込んでいた魔石がなくなっている。
 たぶん、あの時、エレナの魔石が割れて、アーノルドに救援信号が届いたのだ。

「あの……。一緒にいた、ジャン・リドニック卿はご無事でしょうか」
「――――リドニック卿。騎士団の隊長のリドニック卿か? いや、アーノルドから報告は受けていないな」
「そんな……」
「代わりに、騎士団長レイ・ハルト殿の愛犬が、エレナを守るように倒れていたから、保護したらしいが」

(やっぱり、間違っていなかったのだわ)

 エレナが意識を失う瞬間、ジャンの声と、軽い重さが体の上に覆いかぶさったのを感じた。
 それは、確かに姿を変えたジャンだったのだろう。

「パレードの音が、聞こえますね。無事に任務は完遂されたのですか」
「ああ、王立騎士団は、あんな状況だったにもかかわらず、死者がいなかったらしい。魔術師ギルドが到着する前に、決着はついていた」
「――――騎士団長様、おひとりで倒されたのですか?」
「いや、魔術師ギルドに出撃許可が下りた直後、転移魔法で王立騎士団と合流した、上級魔術師アーノルドと、騎士団長ハルト卿の二人の活躍だ」