確かに、アーノルドが扱う属性は氷だ。
 ほかの属性を使うことはできないが、氷魔法に関しては、王都最高の魔術師と誰もが認めている。

「すべてが、まるで運命のように嚙み合った……。そんな英雄たちに、王都の熱気は最高潮だ」
「そうですか……」

 エレナは、長い息を吐きだした。
 いろいろな不都合が、起こっているのだとしても、今はいい。
 レイが、無事に生き残っている。今のエレナにとっては、それが全てだった。

「……ギルド長自ら、私の看病をしてくださっていたのですか?」
「ああ、その姿をほかの人間に見せるわけにもいかないだろう? それに、護衛も兼ねてな」

 たしかに、視界の端に映るのは、パールブルーの髪の毛だし、メガネをしていない今は、瞳はスミレ色に輝いているだろう。ごく少数の人間しか知らないエレナの特徴を見せまいと、ギルド長が付き添っていてくれたのだ。

「それだけじゃないが……。エレナは、自分の状況を理解しているのか? 噂は止められなかったぞ。門番のルーグが、精霊の祝福を受けた魔術師が外に出たと言いふらしているからな」
「――――そういえば、ルーグさんは、そんなこと呟いていたような」
「その姿で、無理に通り抜けたか。あんなに、人に見せるのを嫌がっていたのに、どういった心境の変化だ?」

(隠し通したかった秘密を見られてもいいから、助けたかった)

 パールブルーの髪も、スミレ色の瞳も、人の目には奇異に映る。
 そのせいで、エレナは子ども時代、良く近所の子ども達に石を投げられたし、山の奥の小さな村では、大人たちも気味悪そうにエレナを遠巻きに見ているだけだった。