それでも、何故か、数日前より少しだけ素直に、受け入れられるのは、間違いなくエレナの存在のせいだろう。

 お人好しで、困った人間を放っておくこともできず、自分が傷つくことを厭わない。
 可愛らしく、愛しいエレナは、きっともう、レイの唯一の弱点になっている。

「王立騎士団長レイ・ハルト。上級魔術師アーノルド」

 王の御前に呼び出され、膝をつく。
 今回の企みも上手くいかずに、表情を変えている人間がいないか、頭を垂れる瞬間にも、冷静に周囲の気配を探る。

「やはり、予想通りか」

 ほんの少しの憎悪の気配と香りをレイは見逃さなかった。

「此度の働きに報いる。なんでも、申してみよ」

 欲しいものは、この場で求めても、手には入らない。レイは密かに、嘆息した。
 時々、気まぐれに国王陛下が言う、何でもというのが曲者だ。

 前回は、危うく従兄弟である姫君の一人と婚約させられそうになった。王家にも、秘匿し続けている狼の姿。結婚相手に隠し通すのは、不可能だ。

 それに、その姿を見て受け入れてくれる人がいるなんて、つい先日まで想像すらしていなかった。

「それとも、今度こそ受けてもらえるか?」

 ああ、やはり来たか。
 何度も断っているにも関わらず。
 心に決めた方がおりますので、そう言ってしまえれば、どんなにいいだろうか。