無理、俺にして
***

「よ、っこいせ」


こんなものかね。

隣で寝ている彼女を起こさないように腕をはずして起き上がる。

足を伸ばして座り、彼女の頭を太ももに乗せてやった。


「ぐっすりじゃん、変なの」


警戒心ゼロの寝顔を見て、おかしくて笑う。

もうそろそろ6限も終わって放課後になるというのに、いっこうに起きる気配がない。

こんなもんでもないよりマシかと、ワイシャツを脱いで彼女にかけてやった。

……やっぱり起きない。


起きたらどんな反応をするか、想像するだけでニヤニヤが止まらない。


女はすぐ本気になるからつまらん。

だから秋音とのらりくらり遊んで時間をつぶしていたが、今この子を相手にからかうのが何気に一番面白いかもしれん。


「……」


噛まれた鎖骨にそっと手を当てる。

初めての感覚でちょっとびっくりしただけ。

それだけ。

俺は、面白いからこいつと時間をつぶしてる。

それだけ。


――バン!!

「ゆめちゃん!?」

「お」


乱暴に開けられた屋上のドアから姿を現したのは、随分と慌てた様子の秋音だった。
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