無理、俺にして
「……」


ぎゅっと、手に持っているワイシャツを抱きしめる。

かすかに折原くんのにおいがする。


「……いいにおい」


お母さんが帰って来る前に、早く帰って洗濯しなくちゃ。
小走りで家に向かう。

洗濯したら、当然だけど折原くんの匂いは消えちゃう、んだけど。

そう考えると少し寂しくて、家に帰るまでずっとワイシャツを口元に当てながら家を目指した。


……我ながら相当な変態だと思う。


「……」


いい匂いだな、おちつくな。


「くふ……あ」


そこでやっと、あっくんがさっき言っていたこと思い出す。
確かにさっきの笑い方、折原くんがくすって笑う時と同じだ。

こんなに早く人の癖ってうつるものなの……?

今日の、折原くんとの出来事を思い出してまた顔がボッと音をたてる。


「うううう……」


恥ずかしくてまたワイシャツの中に顔を埋める。


――クシャッ……


「……ん?」


今、クシャッて、紙の音がしたような……?


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