幼なじみの一途な狂愛
過去
大学四年の時、突然━━━━━━

もう単位は十分とっていて、後は卒業を待つばかり。

そんな時大学の友人のスグルに“一緒に会社を作ろう”と声をかけられた。

「俺が秘書としてサポートするから、乙哉は社長になってくれ」
と。

「なんで?俺、バイトで食いつなぐ予定なんだけど。
なんか、生きててもつまんないし」

梨々香が傍にいないなら生きててもしょうがないと、乙哉は半ば生きていくことも諦めていた。

「そう言わずにさ!」
「なんで、俺?」

「乙哉が最強で、最高で、最悪だから」

「は?なんだ、それ」

「お前となら、絶対成功する予感がする」

「嫌だよ。ウザい、きつい、めんどくさい!」


「スッゴい高いとこから、人間を見下ろしたくない?」


「ない」
俺は、梨々に会いたい。
それだけ━━━━

「頼むよぉー
何があったか知らねぇけど、忙しい方が気が紛れるんじゃね?」

“忙しい方が気が紛れる”

スグルのその言葉で乙哉は、卒業後スグルと会社を設立したのだった。



スグルの言う通り、毎日が忙しく、梨々香のことを考えなくて済んでいた。

会社が軌道に乗り出すと、また心に穴があきだした。


「社長!!お願いします!もう一度、チャンスを!
それに、いくらなんでもクビなんて━━━━━━」
ある社員がミスをおかし、乙哉は“一度だけ”チャンスを与えた。

乙哉には、独自のルールがある。

失敗は、一度だけ。
チャンスは絶対に逃さない。
無能は、全て切り捨てる。

しかしまた、その社員がミスをおかしたのだ。
「は?無理!!チャンスは、一度だけ。
それをわかってて、入社して来たのはお前だろ?
今すぐに、退職届を出せ!!」

「社長は、人の心がないんですか?」

「ないよ」

「は?」

「今の俺に、人の心はない」

梨々にしか、何も感じない。
梨々にしか、心も身体も反応しない。

「…………ほんっと、氷の王子だな……」

「は?キモいあだ名、嫌いなんだけど?」

「ふざけるな、まだ26のガキが!!」

「………………だったら、俺を越えてこいよ」

「は?」

「俺は、口先だけの人間は信用しない。
目に見える形を見せろよ!!
ここは俺の会社だ!
ガキだろうがなんだろうが、ここは俺の会社なんだ!
バカにするなら、俺を越えてからにしろ!?」


━━━━━━━━━━━━━━━━
「乙哉」
「ん?」
「お前は、失敗したことねぇの?」
「あるわけな━━━━いや、あるよ。最大の失敗」

「だったら、クビは勘弁してやれよ」
スグルが言う。

「は?一回、チャンスあげたじゃん!」

「まぁ…な」

「俺は、次は失敗しない」

もう一度、梨々に逢えたら…………

絶対に放さない━━━━━━


「もう……二度と手を放さない、傍を放れない」


それから二年の間………

梨々香への想いを更に募らせながら、それに比例して会社の業績も上がっていった。
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