幼なじみの一途な狂愛
罪悪感
乙哉がいる━━━━━━
それだけで、頑張れる気がした。


でもなかなか和多と話す機会が掴めず、二週間経っていた。

そんな週末。
和多からメッセージが入った。

『今日、埋め合わせさせて』

断らなければ………もう、こんな会い方はしないって。
普通に話がしたいと━━━━━━

返事を返す、手が震える。

『今日は、一人にしないよ』

━━━━━━━━!!!!

『はい。わかりました。いつもの所で』


結局、梨々香は和多とホテルに向かうのだった。

二人の待ち合わせ場所は、駅裏の人気のない路地。
和多を待っていると、高級車がゆっくり止まる。

助手席に乗り込んだ。

ごく自然に、和多が手を握ってきた。
「梨々香」

冷たくて、でも…低くて落ち着く和多の声。

「ごめんね、この前はドタキャンなんて……」
「いえ…」
「今日は、大丈夫だから。
梨々香を一人にしない━━━━」


“一人にしない”


梨々香が思う。

あぁ、そうか━━━━━
私は寂しかったんだ。
ずっと傍で守ってくれた乙哉がいない、大学。
社会人になっても、どこかで乙哉ばかりを追いかけていた。

和多はよく“梨々香を一人にしない”と言ってくれていた。

その言葉が梨々香に“安心”を与えていた。


「行こうか」
「はい」

そこに、梨々香のスマホが鳴る。
「いいよ、出て」
「あ、はい」

“乙哉”
画面に映る、名前。

慌てて切る。

「ん?梨々香?
いいんだよ、出ても」
「いえ…大丈夫です」


『梨々ー』
今度はメッセージが入ってきた。

『もしかして、仕事中?』
『今日、飲み行かね?』
『この前、バーにいた奴等と飲もうって話になったさ!』
『仕事終わったら、連絡ちょうだい!
迎えに行くから!』


━━━━━━━━━━━━━━━━
“終わりにしようと思ってる”
そう言っていたのに、今……私はここにいる。

「梨々香」
『梨々~』
「え?乙哉?」

ベッドの上。
和多に組み敷かれている、梨々香。

閉じていた目を開けると“乙哉”がいた━━━━━━


「梨々香?」
「……っ…」
「なんで、泣くんだ?」
「ごめんなさ……」
「梨々香?」

「もう…無理です……」

「梨々香…」

「……………終わりにしてください」


ベッドを下りる、和多。

「…………わかった」

和多はそれしか言わなかった。


本当に、冷たくて、淡白な男だ。



梨々香は、静かにホテルを出たのだった。
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