唯くん、大丈夫?

九条家のデカい妖精さん。

スマホを、家に忘れた。




俺がそう気づいたのは朝、学校についてからだった。

やらかした…と思ったけど、別に誰とも連絡取り合ってないし、あってもなくても同じだった。



テスト最終日が終わってすぐさまバイトに向かった俺は、半分寝ながら5時間の労働を終えて、今、九条家の玄関を開けた。







「ただいま」

「おかえ……ちょっと唯、大丈夫!?」



久しぶりに会う母さんがフラフラする俺を掴んで心配そうに覗き見た。



「あー、ちょっと、寝る」


「え?ごはんは?食べてないんじゃないの?」


「んー…後で食べる」



まだジャケット姿の母さんの手をよいしょ、と外してのそのそと自分の部屋に向かう。

閉めたドアの向こうで母さんが親父に詰め寄る声が聞こえる。


「ちょっと力人(りきと)さん!唯がフラフラじゃないですか!どういうことですか!?」

「え?…えっとー、まさかここまで頑張るなんて思わなくてな…?」

「だから何言ったんですか!」

「ま、まぁまぁ落ち着いてよ理奈ちゃん…あ、ビール飲む?」

「それは飲みますけど…」


親父がいつものように酒の力で母さんを黙らせるのを聞いたところで、自分の部屋に入った。


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