唯くん、大丈夫?

米俵ですか?熊ですか?それとも、

唯くんがヒラッとトイレの中に降りてくる。

かっこよすぎない?

唯くん、ホントにホントにヒーローだったのね。

でもこの状況、どう誤魔化そう?


「……あ、アハハ〜、…あっ?」


激しいめまい。


「優花!?」


咄嗟に唯くんが抱き止めてくれる。




うぅ

世界がグルグルしてる

ダメだ

重力に勝てない

力が

入らない





「…ちょっと我慢して」





唯くんがそう呟いて私をヒョイっと持ち上げた。






……






これは、






米俵の持ち方だな?


唯くん、こういう時はお姫様抱っこだよ?

これじゃわたし猟師に狩られた熊だよ?



唯くんは私を担ぎ上げたままトイレのドアをガンッ!!と大きな音を立てて蹴破った。

そのままトイレを出て、北校舎の階段を駆け降りていく。



唯くんが一生懸命急いでる息遣いを感じる。

あ、唯くん濡れちゃうな。

申し訳ないな…

でも

唯くんと触れてるところがあったかい。

力の入らない手で、唯くんのワイシャツをキュッと掴んだ。

道中、何度かどよめきの声が聞こえたけど
唯くんは無視して早足で廊下を突き進んでいく。

こりゃ明日の浦高トップニュースに載っちゃうな。
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