唯くん、大丈夫?

キーホルダー枠。

「えー、では今日はここまで。お疲れ様でしたー」




先生がいつも通りの定型文を言って、いつも通り黒板をサッサッと綺麗さっぱり真っ黒に消す。




「…」




私は今日もノートにシャーペンを突き立てたまま、口を開けてその様子を見守る。




「はいどーぞ」




金髪のお隣さんが、私が何か言う前にノートを差し出している。




「…みね君」




予備校が始まってはやくも2週間が経っていた。


初日の私の決意もむなしく

この2週間、ただの一度もノートを完璧に取れたことはなく

こうして隣のみね君に、毎日ノートをコピーさせてもらうのが恒例行事になってしまっていた。



…のだけど。




「大変だよ……見て」



私は自分のノートをみね君に見せる。

それを見たみね君が言った。



「…まぁ大変…!完璧じゃないの…!」



驚きのあまりみね君がオネェ口調になった。

私はいすから立ち上がって万歳する。


「ぃやったぁーーー!!凄くない!?凄くない!?みね君ノートから卒業だぁー!!」

「やったな!凄い凄い!じゃあご褒美にデートしよっか?」

「しないよ!」

「めっちゃ笑顔で断るやん」

「ありがとう!ありがとう!唯くんありがとう!!」

「そこは唯くんじゃなくて俺に感謝して?」

「もちろんもちろん感謝してますとも!!今日は奢る!」

「え、やった!ラッキー」


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