唯くん、大丈夫?
「…ッ、鍵」


私の横でしゃがんだ唯くんが、息をきらしながら手を出した。






「…」





喋ることができない私は、言われるがまま右手に持っていた鍵を唯くんに渡した。




唯くんはすかさず駆け上がってすぐそこのドアの前を指差し「ここ?」と聞く。


私が小さく首を縦に振ると、急いで鍵を差し込んでドアを開けた。


そしてまた私の元に戻ってきて、口を押さえる私をお姫様抱っこして階段を駆けあがる。





「トイレでいいよな?」




唯くんが焦りながら靴を脱ぎ、私の靴も脱がせてからすぐそこにあるトイレのドアを開けた。





私が耐えかねて便器に気持ち悪いのを吐き出してると、唯くんが部屋から出ていく気配がする。






うぅ…ありがとう

ありがとう、ありがとう、唯くん







もう行っちゃったよね…

なんて最悪な別れ方… せめて普通にバイバイして今日を終わりたかった

もしいつかまた会うときがきたら

もっとまともな大人の女になれていますように…。



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