イノセント・ハンド
第9章. 少女の真実
『サヤは、姫城警部の子ではないんだ。』

富士本が語り始めた。


『彼女が7歳の時、母親と父親、そして兄が惨殺された。犯人は結局見つからず終い。姫城警部は、一人残された彼女を、養子として引き取ったんだよ。引き取った時の彼女は、ボロボロだったんだ。』

『彼女も・・・幼児虐待を受けていたのですね。』

『サヤさんが?』

『ええ。さっき、洗面所で、彼女の傷だらけの手のひらを見ました。』

『そうか・・・。目が見えないと、うっかり証拠に触れてしまうからと言っていたけど、それが手袋の理由だったのか。』

初日に握手した時から、宮本は不思議に思っていたのであった。

『私は姫城警部に色んなことを教えてもらった。そんな私に、警部は悩み事も打ち明けてくれたんだよ。』

思い出しながら、富士本が語る。

『姫城警部の奥さんも、実はサヤを虐待していたんだ。その奥さんも、警部が亡くなったすぐ後に、亡くなった。』

次の言葉に詰まる富士本。

『話してください。』

咲が、優しく言う。

『奥さんは、マンションベランダからの投身自殺で片付けられた。だが・・・その腕には、あの手形がくっきりと残っていたんだ。』

(!?・・・)

『ジュン!手形の写真を見せて。』

宮本が、画面に拡大写真を出す。

『やっぱり・・・。』

『何だ、サキ?』

『これ、手相のラインって言ってたけど、サヤの手のひらにあった傷跡と同じだわ。』

『じゃあ・・・この手形は・・・』

そこへ取調室から白沢が帰って来た。

『山岸に写真を確認したところ、ムショに現れた少女に間違いないそうです。』
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