落とし物から始まる、疑惑の恋愛
4
 それから一ヶ月後、ハルカがジムのロッカールームで着替えていると、エアロビ仲間が声をかけてきた。彼女たちとは、もうすっかり仲良しだ。
「最近ご機嫌じゃん。彼氏でもできた?」
「ううん! まさか」
 あわてて否定しながらも、ハルカは内心頬を緩めた。
 あれ以来、君島とは食事に出かける仲になったのだ。出会ったきっかけがきっかけだけに、最初はハルカも警戒していた。だが君島は、そんな不安を一掃するほど魅力的だった。話題は豊富で、気配りも完璧である。会う度に、ハルカは彼に夢中になっていった。
 ――ジムに入ってから、いいことずくめだな。
 ハルカは思った。エアロビは楽しいし、仲間たちとは気が合う。最初に対応してくれた笹原というスタッフは、あの後辞めたそうだが、他のスタッフたちも感じが良い。そもそも、エアロビ仲間たちと飲みに行って財布を落とさなければ、君島と出会うこともなかった……。 
 その時、スマホが鳴った。
 ――君島さんかな。
 勢い込んでスマホを手にしたが、来たのはクレジットカード会社からの請求の通知だった。
 一瞬落胆したハルカだったが、内容を見て目を疑った。そこには、とんでもない金額が記載されていたのだ。
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