落とし物から始まる、疑惑の恋愛
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 もう一度利用記録を確認して、ハルカは愕然とした。アダルトサイトの利用日は、財布を紛失した日だったのだ。脳裏では、カード会社の人間の台詞がこだましていた。
『彼氏が観たのかもしれないでしょ……』
 

 その後ハルカは、不正利用分の支払いを無事免れた。だが、気分はすっきりしないままだった。
 ――君島さんが、財布を拾った時、カードを使って財布に戻した……?
 そうは思いたくない。だが、君島が無実だと言い張るには、彼に不利な証拠がそろいすぎていた。財布を紛失した際、カードの利用停止手続を取ったとはいえ、翌朝の話だ。
 ハルカは、理由をつけて君島を避けるようになった。彼からは、クリスマスのデートに誘われている。だが今の状態で、応じる気にはなれなかった。
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