落とし物から始まる、疑惑の恋愛
7
 そんなある日、母親がハルカのアパートを訪れた。近況を語るうち、彼女はこんなことを言い出した。
「そういえば、最近変なワン切りが多いのよ。気持ち悪くてね」
「いつからなの?」
「先月の初めくらいから。家族と親しいお友達以外には、番号なんて教えてないのにねえ……」
 確かに、母の交友関係は狭い。どこから番号が流出したのだろう、とハルカは訝った。
 ――そういえば。
 ハルカはふと、スポーツジムに家族の電話番号を登録したのを思い出した。入会したのは、まさに先月の初めだった。ジムから流出したのだろうか。
 思わず顔をしかめたくなった。あの時は、他にも多くの個人情報を登録したからだ。住所に電話番号、メールアドレス……。
 ハルカは、そこではっとした。アダルトサイトにハルカのメールアドレスが登録されていたのを、思い出したのだ。だがハルカは、君島にメールアドレスを教えていない。彼とのやり取りは、いつもメッセ―ジアプリだ。では、犯人は君島ではなかったのか……?
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