ずっと探していた人は
「大切だったと思う……。けど、せっかくのクリスマスイブだから。俺が好きな人たちと一緒に過ごしたい、って思った」

“自分の気持ちに嘘ついてまで、誰かと一緒に過ごしたくなかったんだ”

その言葉にハッと大橋くんを見ると、大橋くんの強いまなざしとぶつかる。

「ほら。やっぱり野球部って、俺にとって特別だから。あ、滝川さんこそ、よかったの、クリスマスだよ」

自分の発言を恥ずかしく思ったのか、大橋くんは少し慌てた様子でー顔を真っ赤にしながらー尋ねる。

はっきりとは言われなかったけれど、大橋くんの聞きたいことはわかっていた。

「うん……相手、クリスマスとか関係ないから」

「あ、そうだね」

大橋くんは私の短すぎる返答にうなずく。

「流れ星、流れないかな」

私がこれ以上話さないー話したくないーことに大橋くんは気づいたのだろう。

さりげなく話題を変えてくれる心遣いを、私は嬉しく思った。

「どうだろう。流れてほしいね」

クリスマスイブだし、と付け加えた私に、大橋くんはうなずいた。

「もし流れ星が流れたら、何をお願いしたい?」

「え、なんだろう……」

軽い気持ちで定番の質問をしただけなのに、大橋くんは大真面目に「うーん……」と悩む。

真剣に悩む様子が面白くて、私は思わずふふっと笑う。

「けどやっぱり」

一度大きく息を吸って、ゆっくりと、けれど力強く答えた。

「背番号1番が取れますように、かな」

「叶うといいね」

「滝川さんは? 何お願いする?」

「うーん……私は」

「「あ!!」」

私と大橋くんは、同時に声を上げる。

「今……」

大橋くんが息をのむ。

「流れたよね、星……!」

信じられない気持ちで大橋くんを見ると、大橋くんは呆然と夜空を眺めていた。

「よかったね、きっと叶うよ」

「あ、けどお願いするの忘れてた……」

「せっかくのチャンスだったのに……!」と頭を抱える大橋くんを、私はけらけら笑う。

「大丈夫だよ、流れる直前にお願いしたじゃん」

「けど、せっかくのチャンスが~~~」

大橋くんは全身の力が抜けたように、ぺたりとその場に座り込んだ。

「大丈夫だって。きっと流れ星には聞こえていたよ、大橋くんのお願いごと」

「そうかなあ……」

大橋くんは思った以上に落ち込んでいて、笑ってしまう。

「大丈夫だよ、絶対」

座り込んだ大橋くんを励ましながら、私は空を見上げる。

“大橋くんの願いが、叶いますように”

過ぎ去った流れ星に願いが追い付くように、私は何度も何度も、心の中で唱えた。
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