ずっと探していた人は
「滝川さん、夏大の地方予選の応援、来てたでしょ」

大橋くんは、私が覚えていないことは想定内のことだったのか、ヒントを与えるように、ぽつりと話し出す。

けれどそれでも私は全く思い出せず、首をかしげる。

大橋くんは、そんな私を見て微笑むと、私の髪の毛にそっと触れた。

「試合の後、俺、公園でキャッチボールをしててー……」

「あっっ!」

大橋くんの言葉に、記憶が鮮明によみがえる。

去年、高校1年生ながらベンチ入りした徹のために、私は球場まで応援に駆け付けた。

徹はスタメンで出場して、それなりに打ったし、得点も入れたけど、試合後は珍しく「もっと打ちたかった」と落ち込んでいて……、

元気づけるために、徹の好きなアイスをもって徹の家まで差し入れに行った。

すると、徹のおばさんが、徹は近所の公園でキャッチボールをしていると教えてくれてー……

「あれ、大橋くんだったんだ」

やっと思い出した私に、大橋くんは、そうだよ、と笑う。

「俺、中学時代はシニアで野球をしていて、エースナンバー、背負ってたんだ。だから、それなりに、自分の投球に自信はあったんだけど……」

大橋くんが話し出す。

「あの日、試合で投げていたのは、シニア時代の先輩だったんだ。先輩、球速いし、コントロールも良いし、俺、あの先輩が投げるなら、甲子園まで行けるって、本当に思っていた」

けどね、と大橋くんは続ける。

「あの先輩でも、バカスカ打たれているのを見て、俺、思ったんだ。『俺の実力じゃ、高校では全く通用しないんじゃないか。そもそも俺、ここにいても、なにもできないんじゃないか』って」

「俺、試合後にはすっかり自信なくしちゃって。この先、野球、続けられるかな、俺、野球続けたいのかな、って思ってしまっていた時に、滝川さんが公園に来て……」

「うん、覚えてる」

確かキャッチボールをしている相手が、投手だって、徹が紹介してくれたんだ。

「『投球、見てみたいな』って、私、言ったんだよね」

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