ずっと探していた人は
動けずにいたところを助けてくれたのは、徹だった。

「きみが?」

怪訝そうに聞き返す涼くんに、徹はひるむことなく答えた。

「はい、俺、幼馴染で、加恋の母親から連れて帰るように頼まれているんです。夜道を1人で歩かせるのは怖いって」

「な! 約束してたんだよな!」

同意を求める徹の言葉に、私はチラッと徹のほうを見ると、目で伝えてくれた。

大丈夫だよって。

困った時に、いつも助けてくれるこの目。
幼い頃から、いつも助けてくれるこの目。
普段はただのお調子者だけど、本当に困ったときに助けてくれる徹に、何度救われたかな。

「う、うん」

少しつっかえながら答えると、隣で徹が笑った。

「俺の母親と加恋の母親も仲良いんっすよ。もし俺が連れて帰らなかったことが母親に知られたらきっと怒られるので、俺が加恋を連れて帰ってもいいですか?」

努めて明るく言った徹に、涼くんは完全に納得した様子じゃなかったけれど、しぶしぶうなずいた。

「あざっす! じゃ、帰ろうぜ!」

私の腕を徹が引っ張っていく。

「加恋」

涼くんの隣を通り過ぎた時、引き留められた。

「また明日ね」

涼くんはいつも通り、私の頭を優しくなでてくれた。

けれど私はその日初めてー……頭をなでられて、涙が出そうになった。


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