ずっと探していた人は
「加恋」

私より遅れてやってきた涼くんは、少し離れた場所から私の名を呼ぶ。

「じゃ、また明日ね」

大橋くんは、涼くんにガバッと頭を下げるとグラウンドに去っていった。

「うん、練習頑張って!」

大橋くんの背中に声をかけると、大橋くんは後ろを振り返って、いつも通り手を挙げながら笑顔をくれた。

「最近、本当に大橋くんたちと仲良いよね」

すっかり秋らしくなり、少し冷たい風が私たちを包む。

「そうかな?」

確かに仲は良くなったけれど、ここで肯定すると、心配性の涼くんがもっと心配すると思い、私ははぐらかす。

だって私と大橋くんの仲良しは、友人として、だし。

「ちょっと心配だな…………」

涼くんがぽつりとつぶやくのに対し、ただの友達だよ、と返す。

先輩たちの嫌がらせを受けて以降、涼くんはとても心配性になった。

先輩たちから私を守ったのは大橋くんだと知って、焦って不安になったようだった。

早退してしまった日、私が「好きかどうかわからない」って言ったしまったことも関係があるんだろうけれど、涼くんは以前に比べて、ずっとよく連絡してくれるようになったし、学校に来ている日はほぼ毎休み時間教室に来る。

【今何してる?】
【明日、会える?】
【会いたい】

こんなメッセージを一日何通も受け取る。
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