ずっと探していた人は
幸せなら
「なあ、これ、どう??」

「うわ!」

「ぎゃーっ!!」

白い布を全身にまとったうえ、顔も真っ白に塗られた中川くんに背後から声を掛けられ、私と由夢は遠慮なく大声をあげ、後ずさった。

私たちのリアクションに、中川くんは満足気にククッと笑う。

今日は11月3日、文化祭。

私たちのクラスはお化け屋敷をすることになっていて、男子はお化け役となり脅かすために、変装をしていた。


「ガオーッ」

「「ぎゃーーーっ!!!」」

中川くんの変装に呆気に取られていると、またも背後から大声を出されて私と由夢は飛び上がる。

そこには、青白くて口周りに血がついているだけではなく、片眼が真っ白になった、ゾンビメイクをした徹が立っていた。

「どう? かなり本格的でしょー?」

私たちの驚く様子に、メイクを担当したクラスの女の子が嬉しそうに笑う。

「思った数倍、本格的だったよ……」

「さすがメイク達人!!」

私と由夢が褒めると、その子は笑いながら、誇らしげに自分の胸をどーんっと叩いた。

「大橋は吸血鬼なんだぜ」

「お、大橋くんもすごい……」

ゾンビーううん、ゾンビに扮した徹―に連れられてやってきた大橋くんは、元から肌が白いだけあって、徹より血のりが映えていてゾッとする。

暗闇の中では、徹のゾンビより、大橋くんの吸血鬼の方が怖い気がする。

「大橋くんはスーツなのに、徹はラフな格好だね……?」

スーツを着てネクタイまできっちりしめている大橋くん。

一方で徹は、破れたよれよれのトップスとダメージジーンズーそれもかなりのダメージジーンズーという、2人は真反対の格好をしていた。

「一応、ゾンビも吸血鬼も、血を吸う生き物だよねえ……?」

私の疑問に同意するかのように、由夢は曖昧に頷く。

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