青に染まる
 快活でいい人だ。春子さんは。

 色々教えているうちに日が傾き始めていた。またと言って解散し、下校しようとしたところで人影に気づく。

「あれ、白崎くん?」

 たまたまだろうか。そこには白崎くんが立っていた。どこかむっとしたような表情だ。心当たりはないから何かあったのだろうか。

「相楽」
「何かな」

 名前を呼ばれたので返事をすると、渋面が広がった気がする。本当にどうしたのだろうか?

「白崎くん?」
「その白崎って呼ぶの、やめてもらえます?」
「えっ?」

 ふいっと顔を背けて、彼はぶつくさと続ける。

「だから、下の名前で呼んでくださいってことです」

 そう告げた顔が赤いのは、果たして夕焼けのせいだけなのだろうか。

 僕はくすりと一つ笑うと、こう返した。

「幸葵くん」
「……はい」

 呼ぶと彼は微かにだが、笑った。

 その後から、幸葵くんとの距離はぐっと縮まった。

 やはり何かにつけて前後の席というのはプリントを配ったり、提出物を前に送ったりで接する機会が多い。それゆえ、与太話をするくらいの仲にはなった。
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