「佐合機長!」

最終の着陸態勢に入ったときだ。

佐合機長がいきなり身悶え始め、俺は思わず声を荒らげた。

「う……っ」

腹部を押さえ、佐合機長は前に倒れ込みそうになるのを必死に堪えている。

パイロット・インキャパシテーション――パイロットの突発性機能喪失。佐合機長は肉体的機能の一部喪失、あるいは一時的に喪失している状態だった。

すぐさま操縦を代わり、酸素マスクを着けた。

ひとりで操縦する場合はマスクの着用が義務付けられている。

椅子のリクライニングを倒して佐合機長を寝かせ、コックピットにチーフパーサーを呼び、応急手当をする。

チーフパーサーが搭乗者名簿を確認したが、医師と思しき乗客はいないそうだ。

佐合機長のどんどん痛みはきつくなっているようで、脂汗を浮かせ、うめき声を上げている。

まさか重大なインシデントに二重で見舞われるとは思ってもみなかった。

とはいえなんとなく、今日のフライトは嫌な予感がしていたのは否めない。