「………そっ、それより、私用事があるんでお先に失礼しますね………」
「………あっ、待って………」
「………何で呼び止めるんですか?」
「モカ、さっきから鼻声だったし、目赤い。………モカが泣いてるとこ見たくない」
「さっきから、私の名前呼ばないで下さい………!」
「………ごっ、ごめん。気安く呼んでいいもんじゃなかったよな………」
「それなら、良いんですけど………。それより、失礼します………!」
そう言って私はその場を去った。
この出逢いが私の人生を狂わせていく事を、今の私にはまだ知らなかったのだった――。