Mazzo d'amore
ブルームーン(叶わぬ恋)
ちなみに父、光太郎の人生で一度は言ってみたいセリフは突然、前触れなくやってきたりする。

私が幼い頃からそれは今まで何度もあった。

一つ例え話しを出すなら私が小学6年生のある日、街中を家族で歩いてると街頭アンケートに協力してくださいと父が話しかけられた。

すると父はペンを持ちアンケートに答えようとした瞬間言い放った。

「ここはお父さんが食い止めるからお前たちは先に行け!」

「え?え?」

突然の父の叫びにアンケートのお姉さんはポカーンとしていた。

「あなた…あなた…」

「良いから!ここは俺に任せろ!後の事は頼んだぞ!早くいけー!」

「早く行くわよ!大丈夫!お父さんはきっと後で会えるから!」

そう言って母に腕を引っ張られて連れて行かれた。

当時の私もアンケートのお姉さん同様ぽかーんだった。

母はよく恥ずかしげもなく付き合えるなと思った。

私達家族の茶番にアンケートのお姉さんもなんなんだこのコメディ家族はと思っただろう。

その後、父と合流するとさっきの演劇はなかったかのようにまた普通に歩き出した。

そんな感じを繰り返してるので私も高校生になる頃にはこれが普通になっていた。

ちなみに建築関係の会社を経営してる事務所のそばに我が家があり母は平日の昼間は事務所にいる。

先日、高校から帰りに事務所に寄ったら

「何してるの?」

「しっ!窓の前には立つなよっ!」

父が窓ガラスの横近くに立ちブラインドを指先で広げ外を確認していた。

「くそ!油断してたぜ。俺とした事が跡を付けられてたとはな…」

(あ、なんかはじまったんだ。敵に狙われてるのかな?)

「敵は1人、2人…3人か。……なあ母さん?」

パソコン仕事してる母はパソコンを打ちながら父へ助言した。

「後、もう1人居るわ」

「なに?どこだ!?」

「50m北西方面のビルの屋上からバレットM82A1の狙撃銃でこちらを除いてる。気をつけて」
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