Mazzo d'amore
カンパリオレンジ(初恋)
私は子供ながらにこのまま道路に出て行った所を大人に見つかったら怒られると思い、家から近所の公園に一度行って親を安心させてからの道路に出る作戦を立てた。

我ながらなんてずる賢いんだと思った。

「ところで菜音くんの家の歯ブラシはなに?」

「なにって…わかんない」

「心春の家の歯ブラシは『今日を愛するライオン』だよ」

「なにそれ、おもしろーい!」

私はよく父が当時言っていたセリフを真似ていた。

「いやぁ、クリニカも捨てがたいがやっぱり今日を愛するライオンだよなぁ…おっとトイレトイレ」

ガチャッ

バタン

「何が出るかなっ何が出るかなっチャラチャッチャッチャララララ………んんっ!!

ぶりっ!!

クリームソーダ、略してクソ!」

「朝から汚ねえ言葉をトイレで言ってんじゃないわよ!子供が真似したらどうするのっ!」

早朝から母に怒られる父を見て流石にそれは大人になった今は真似をしたいとは思わない。

そして、私と菜音くんは私のおばあちゃん家を目指して歩き出した。

距離にして1000m程。

大人の足なら18分程度。

途中、線路を挟んだり、信号のある道路を渡ったりするので時間はもう少し変動する。

距離にしてもアトラクションの数々にしても3歳児2人が親の目を盗んで勝手に行ったら怒られ案件確定だ。

しかし私達はワクワクしていた。
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