Mazzo d'amore
ブランデークラスタ(時間よ止まれ)
カランコロン

「いらっしゃいませ」

本日もMazzo d'amore(マッツォダモーレ)の扉が開いた。

今日は1人のお客様。

少しご年配の方だけど綺麗な身なりやたたずまいから紳士なお客様だと感じた。

私達が席に案内する前によいしょと言ってカウンターの端に腰をかけた。

「ビールを一つ」

「はい、かしこまりました」

「君も何か飲みなさい」

「この子お酒飲めないので代わりに私がいただいてもよろしいですか?」

翔子さんはお客さんにそう言って了承を得てビールをいただき2人は乾杯をした。

「ほう!三つ葉のクローバーのしおりか、一ついただいても良いかね?」

私は笑顔で頷き手に取り手渡しした。

「ちなみに私は本を年間3冊は読むようにしてるんだよ」

「さすがですね、私も出来るだけ読もうとはしてるんですけど中々時間なくて…」

「本を読むことが仕事や勉強の成果に繋がるとも言われてるんだよ」

「知らなかったです」

「所で身長体重はいくつだい?胸も大きいね」

「いや、紳士かと思ったら急にデリカシーないっ!」

「え?」

紳士からの非紳士へのチェンジぶりに思わずびっくりしてしまった。

ちなみに今の身長は160cmと言っているが多分それに届かないぐらい。

体重は言うわけない。バストも言うわけない。

「こりゃすまんすまん!魅力的な体をしてるからついな。ところでお店の奥に飾ってあるグローブは?」

「あれは年末に行われた試合で使用したグローブをいただいた物なんですよ」

「ほぅ!ちなみに誰の試合だったんだい?私も格闘技は好きな方でね」

「上島選手対渡辺選手の試合です」

すると紳士なお客さまは目を見開いて興奮した様子で口にした。
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