「俺は真壁翔、三十二歳、真壁不動産社長だ」
「社長さん、若いのに凄いですね」
「そうかな」
「ご結婚はされているんですか」
「うん」
「きっと若くて可愛らしい奥様なんでしょうね」
「妻の名前は真壁静香、四十七歳」
「随分と歳が離れているんですね、びっくりしました」
「子供もいるんだ、真壁翔太、五歳、凄く頭がいいんだ」
「そうですか、真壁さんのお子さんなら、きっとイケメンですね」
静香はニッコリ微笑んだ。
俺は焦ってはいけないとわかっているのに気持ちが抑えきれず
静香の手を引き寄せ抱きしめた。
「真壁さん、どうされたのですか」
「静香、静香」
俺は我に帰り、静香の身体を引き離した。
「ごめん、急にびっくりしたよね」
「いえ、大丈夫です、静香さんを愛しているんですね」
「明日翔太を連れて来てもいいかな」
「翔太くんですか」
「色々見たり聞いたりすると、記憶が戻ってくるかもしれないだろう」
「真壁さんはどうしてそんなに優しくしてくださるのですか」
「早く、記憶が戻ればいいかなって」