高嶺の社長と恋の真似事―甘い一夜だけでは満たされない―


なんでもハキハキ言う桃ちゃんにしては珍しく言いづらそうにしているので、不思議に思いながらも、フォークを置き聞く体勢を作る。

「うん?」
「あの、さ。私からもちょっと相談があるの。上条さんの秘書の緑川さんって恋人いるのかとか知ってる?」

思わぬ問いかけをされ、目をパチパチとしばたたく。

「……え。緑川さんって、あの……黒髪短髪で目つきのあまりよくない……ついでに、性格も若干ひねくれてる、あの……?」

緑川さんについては、私の口からも桃ちゃんによく話している。

こんなことを言われただとか、ひどい顔で見られただとか……つまり、あまりいい話はしたことがないだけに、桃ちゃんがどうして緑川さんに興味を持っているのかがわからず眉を寄せた。

そんな私に、桃ちゃんが笑顔になる。

「うん。美波から聞いてて、理屈っぽいところとかいいなぁってずっと思ってたんだよね。そういうところをやり込めてやりたいっていうか、へし折ってやりたいっていうか……想像するとぞくぞくしない?」

頬をピンクに染めて聞いてくる桃ちゃんに、しずかに首を横に振った。
たぶん、私の知らない世界の話だ。

「……私はしない、かな」
「まぁ、美波はそうかもしれないけど、私的には結構タイプだってこと。強面も好きだし、一線引いてる感じも好き。だから今度、会う機会作ってもらえないかな? ほら、さすがに上条さんにお願いするのは図々しいかと思って」
「それは……うん。私に協力できることなら」


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