高嶺の社長と恋の真似事―甘い一夜だけでは満たされない―


上条さんが偏差値が高くて有名な大学を出ていることや、上条さんが経営しているカフェが私もたまに入るお店だったことに驚いたり。

最近話題になった映画を偶然にもお互い観ていて、私はボロ泣きだったのに対し、上条さんはひとつも心を動かされなかったと言うから、ちょっとしたディベート大会みたいになったり。

試食会が行われたレストランを改装した際、イメージ通りの照明が見つからなくて海外まで探しに行ったという話を興味津々になって聞いたり。

上条さんはたまに私をからかったりして意地悪な笑みを浮かべていたけれど、そんなことも楽しくて意外にも話は弾んだ。

『それ、からかってますよね?』と疑う私に『当たり前だろ』と口の端を上げる上条さんには、ムッとはしたものの、でも元の顔立ちが整っているせいでカッコよくも見えてしまい、色んな感情が競り合っていた。

だから……ということもあり。
実はお守りの大切さを共感してくれたときから気持ちが高ぶっていたせいもあり。

そして、久しぶりに感じた胸の高鳴りも大いに手伝い、バーを出たとき、上条さんに手を伸ばしてしまった。

この時間が終わるのが嫌で、もっと一緒にいたくて。
恋の感覚を、もっと感じたくて。
衝動に身を任せて手を伸ばした。

『あの……』

手に触れた私に、上条さんは驚いた表情を浮かべたあと、真面目な顔になり私の腰を抱き寄せ、そのまま唇が重なり――。


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