高嶺の社長と恋の真似事―甘い一夜だけでは満たされない―


玉砕覚悟でした告白を迷惑ではないと言われ、動揺しながらも、上条さんが真っ直ぐに私を見てくるので、冗談ではないんだとわかり、ふっと笑みがこぼれた。

「上条さんも、十分素直だと思います」

期待を持たせて面倒になるのは上条さんなのに、というニュアンスで言った私に、上条さんは腕を組み、背中を背もたれに預けた。

「相手による。これが仕事の場ならもっとうまく立ち回るが、今は違うからな。それに、嘘が嫌いだって言ったのはおまえだろ」

嘘が嫌いなのは私であって、上条さんが私に合わせる義理はない。
それでも、真摯に向き合ってくれる姿に胸がキュッと掴まれる。

軽い恋愛を繰り返してきたという過去を疑いたくなるくらい、上条さんは私に対して真剣に考えてくれている気がした。

いや、でもさすがにそう思うのはうぬぼれすぎか……と自分自身に釘を刺しながら「ありがとうございます。嬉しいです」と笑顔を返した。



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