エリート御曹司は独占本能のままにウブな彼女を娶りたい
苦い思い出


 *******
 

「お帰りなさい」
 
エプロン姿で出迎えた優杏を見て、煌斗は玄関に立ち尽くした。

「ただいま……」

優杏が家にいると思うと、今日の仕事ははかどった。

結婚した仕事仲間たちが一分でも早く家に帰りたいと言っても、その心境がわからなかったのだが、やっと煌斗にも理解できた。

(愛らしい妻が家で待っているというのはエネルギーが湧いてくるものなんだ)

「お食事になさいます?」

「いや、その前に話がある」
「話?」

「家のことなんだ。今日、見に行ってきた」

「どうでした?」

「そこまで被害は大きくないが、やはり法面の工事が杜撰だったんだろう」
「やはりと言うのは?」

「排水のための工事にミスがあって、機能していないんだ」
「それで崩れたんですね」
「ああ、悠慎が心配していたのはそれだったんだろう」

「兄は何か感じていたんでしょうか?」

「それはわからないが、技術者のカンだろう」
「そうですか……」


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