禁忌は解禁された
一颯と銀二
「銀二」
「はい」

「お前が組長で良かったんじゃね?」

「またその話ですか?いい加減、飽きました…」
「だって、俺はお飾りみたいなもんだし!」

デート前にどうしても事務所に寄ることになり、一颯を車で待機させている颯天と銀二。
今、組事務所で対当している。

「私は本来、人の上に立てる器ではありません。
それに、幹部達は貴方が組長になることに誰一人反対してないじゃないですか?」

「そう!それなんだよなぁー!
なんか、おかしくね?」
「は?」
「普通、反対するだろ!?
銀二、裏で幹部のおっさん達を脅しでもしたの?」

「しませんよ。
挨拶、行きましたよね?」
「は?あー、成人してすぐの?」
「はい。あの後……幹部の人間達が口を揃えて言った言葉があります」
「ん?」

「“神龍寺 颯天を敵に回してはいけない”」

「は?」
「確かに今の組長では、経験はもちろん、力も頭脳も足りない。“そうゆう意味では”組長の器ではない。
でも、それは私共がフォローすればいいだけのこと。
貴方には、私達が持っていない重要なモノがある。
それが、強みです!」
銀二が颯天を見据え、言い放つ。

「何?」
「威厳と、非情さです」
「そう?」
「お父様と血が繋がっていなくとも、貴方は“神龍寺 颯太”の息子に間違いない程の威厳がある。
あの方が裏の世界で一目置かれてた理由は、あの“目”です。あの目に睨まれると、本当に蛇に睨まれた蛙のようになるんです。どんなにこちらに力があっても、途端に手が出せなくなる。
貴方は、非常によく似ています。
お父様、言ってましたよ?
貴方の本当のお父様も、かなり恐ろしい人間だったと。“生きていたら、俺を越えてた”って言ってました」
「ふーん…まぁ、いいけどよ!」

「姫が待ってますよ!早く出ないと!」


事務所を出て、車に乗り込む颯天。
「ごめんね、遅くなって!」
「ううん。町野くんや百田くんとお話してたから!」

「後は俺がつくから、町野と百田は待機しててくれ」
「はい」
「わかりました」


銀二の運転で、ゆっくり車が動き出した。
「とりあえず、デパートですよね!」
「うん!」
「何が欲しいの?」
「ん?ハーブティ!」
「あー、いつも一颯が飲んでるやつね!」
「うん!デパ地下が一番種類が揃ってるの!」
「へぇー!」
「でもいいの?」
「何が?」
「颯天は行きたいとこないの?ハーブティは今日行かなくても、今度行けばいいんだし」

「俺は一颯といられれば、何処でもいい!」
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