禁忌は解禁された
颯天=颯太+天馬
「失礼ー!知衛のおっさんいるー?」

颯天と銀二は、暁生、町野と百田達部下を連れて知衛組の本事務所前にいた。

事務所前にいた、知衛組の組員に声をかける颯天。

「神龍の坊っちゃんじゃねぇか!」
「中、入れて?」
「あ?」
男が、颯天の胸ぐらを掴み凄んでくる。

「汚ねぇ手で、触るな……おっさん……」
「……っ…」
颯天が男を睨みつけると、男は少し後退りゆっくり手を離した。

「中、入れろ…」
颯天の言葉と雰囲気に、ゆっくり道を開けた知衛組の組員だった。


「これは、これは神龍の坊っちゃん。久しぶりだな」
知衛が、ソファに寛いでいた。

その向かいの席に座った颯天。
足を組み、知衛を見据えた。

「おっさんは、老けたな」
「そりゃあなぁー。坊っちゃんの親父と同期だからなぁ。お前……やっぱ、神矢(かみや)の息子なんだな。まぁ…当たり前か……」
「は?」
「お前の本当の父親だ。
神矢 天馬(てんま)。神龍寺の親友で、ライバル。
当時は最強と言われた男だ。
神矢に勝てる人間はいなかった。
いや、神矢は人間じゃなかったかもしれない。
……………そのくらい、恐ろしい奴だった…!」

「へぇー」
「聞いたことないのか?」
「ない。聞きたいとも思わない。
俺の親父は、神龍寺 颯太だ」

「フッ…!!!その親父は、お前の本当の親父から命より大切な人を奪った男だぞ」

「は?」
「律子だよ」
「………母さん?」

「神龍寺はな。
律子を犯して、孕ませたんだ」

「は………?」

「元々は、律子は神矢の女だった。
“あの”神矢が、律子の前だけは“普通の男”になってた。本当に心の底から愛してたんだろうな。
慈しむように愛してた。
神矢はよく言ってた。
“律子の為なら、何でもする。命を全て捧げる”って」

「なんだよ、それ……!」

「律子はアイドルだったから。
色んな男が狙ってた。
神龍寺は、律子を神矢から奪う為に犯して孕ませた」

「まさか、その時の子………」

「あぁ!それが、お前の愛する“神龍寺 一颯”だ」

この事は、銀二達も知らなかった事実。
誰もが、知衛の言葉にフリーズしていた。


「皮肉なもんだよなぁ」
「あ?」
「自分が裏切った男の子どもを育て、挙げ句の果てにその子どもを庇って死んだ颯太。
本気で愛してた男と別の女との子どもを引き取った律子。あ、一番の被害者はお姫様だな!
な?お前や深澤達神龍の連中が尊敬し慕ってた男は、お前の本当の父親を裏切った奴なんだよ!!
お前は……お前達神龍の連中は、そんな裏切り者の家族の為に、裏の世界に堕ちたんだよ……!!!」

「………だったら、何だよ……」
「は?」


「おっさんは、何もわかってない」


颯天は動揺することなく、真っ直ぐ知衛を見ていた。
< 32 / 85 >

この作品をシェア

pagetop