禁忌は解禁された
一颯の覚悟
「真紘くん、起きてる?」

颯天に抱かれ一緒に風呂に入った後、颯天が寝てしまい一颯は一人、井田の部屋に来ていた。

「真紘くん、入るね」
しかし、部屋の中は真っ暗で誰もいない。

「あれ?」

「姫?」
「あ、銀くん!
真紘くん、知らない?」

「…………井田は、急な仕事で出てます。
帰ってくるのは明日になるので、姫も休んでください」
銀二の微妙な、表情の変化。

一颯は瞬時に悟った。

道加はもう……表の世界にいない。
いや、この世にいないのかもしれない。

と━━━━━━


「ほんと、嘘が下手だね………」

「え?」

一颯はそう呟いて、銀二に“おやすみ”と言って去っていった。
そしてそのままキッチンへ向かった、一颯。

ハーブティの茶葉とティーセットを持って、再び井田の部屋に向かう。

テーブルの上にセッティングして、手紙を書き部屋を出ようとする。
突然、テーブルの上に乱暴に積まれていた書類が崩れ、下に落ちる。

それを、テーブルに戻そうとして小さなノートを見つけた。
たまたまノートが開いていて、中身が見え一颯はつい読んでしまう。

◯月×日

明日から、姫の護衛につくことになった。
憧れの姫の護衛。
銀二さんみたいにできるだろうか。
でもなんで、組長は俺を護衛にしたんだろ?
わかんねぇ…
でも、頑張るしかない!
姫は、俺が守る!

◯月×日

朝、姫に挨拶したら可愛らしい笑顔が返ってきた。
つか!可愛すぎ!
今日から、ずっと傍にいることができる。
このまま姫の信頼を得ることができたら、心まで得ることできんのかな?
それは、贅沢だな。

中身は井田の日記で、ほぼ毎日書き記されていた。

◯月×日

梅雨時期の為か、最近雨と雷が酷い。
姫がポツンと“もう、誰も連れていかないで”と呟いていた。
大丈夫。俺が、誰も死なせない!

◯月×日

初めて、姫を危険にさらしてしまった。
姫は“大丈夫だよ”と何度も言ってくれた。
でもかなり、身体が震えていた。
俺のせいだ。俺が、あの時目を離さなければ……!
もう二度と、危険にさらさない!

「あー、この時…真紘くん、お父さんと颯天と銀くんに殴られてたな……」


パラパラと捲ると、中身は全て…一颯に対する思いしか書かれていない。

そして、ついこの前のことも書かれていた。

◯月×日

知衛組が、接触してきた。
姫はどうしていつも、謝るのだろう。
俺はただの、姫の護衛で盾なのに。
いつもそうだ。
“大丈夫?”“ごめんね”“ありがとう”
そんな言葉は、必要ないのに。
涙まで流して。

あと最近、姫への気持ちが抑えられなくなっている。
ヤバい、日に日に惚れていく。

「え………」

惚れて…いく……?
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