【完結】橘さんは殺された。

⑤真相の裏側



「牧村勇吾先生、ですよね?」

 そしてその数日後、俺は瀬野さんと一緒に牧村先生の所を訪れた。
 牧村先生は今、地元から数キロ離れた高校で数学の教師をしているという話を聞き、今日ここにやってきた。

「……藤嶺? 藤嶺、なのか?」

 牧村先生は俺を見て、驚いていたような表情をした。

「はい。俺、藤嶺颯(かける)です。……お久しぶりです、牧村先生」

 牧村先生は当時と比べてもあまり変わっていないような気がした。
 昔から爽やかでイケメンで、かつ女子生徒からはとても人気のある先生だった。……それは今も変わらないようだ。

「藤嶺、お前ちょっと大人になったな。イケメンになったな」

「ありがとうございます。 先生には敵いませんけどね」

 と、一言余分に付け加えてしまった気もするが……。
 ここは気づかぬふりをしよう。

「で、お前今何やってるんだ?」

 と聞かれた俺は、先生のコーヒーを淹れる背中を見ながら「捜査一課の刑事です」と答えた。

「……刑事?」

 そう答えた瞬間、牧村先生の手が止まったようにも見えた。

「はい。 今隣にいるこの人が、俺の相棒で……」

「瀬野祥平(しょうへい)と言います。……よろしくお願いします、牧村先生」

 瀬野さんを紹介した後、牧村先生は「どうも、牧村です」と言葉を発し、再びその手が動き出した。

「どうぞ」

「ありがとうございます」

「すみません、ありがとうございます」
 
 牧村先生からコーヒーを受け取る。

「所で、藤嶺は俺に何か用があるんだよな?」
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