【完結】橘さんは殺された。

⑦父親



「橘百合子さん……ですよね?」

「え、ええ……。そうですけど」

 その翌日、俺と瀬野さんは橘智夏の母親の元を訪れた。

「お忙しい所、申し訳ありません。……娘さんの事件のことで、一つお伺いしたいことがあります」

「……娘の、ことで?」

 橘さんの母親は、驚いたような表情で俺達を見ている。

「はい。……俺達は今、ある方からの依頼で娘さんの事件について調べ直しているんです」

 母親にばある方からの依頼゙とウソを付いた。それは俺自身が母親に教えたくないと思ったからだ。

「……どうぞ、お入りください」

「失礼します」

「お邪魔します」

 俺と瀬野さんは、母親が住んでいる家のリビングに通された。

「今お茶を用意しますので……」

「いえ、お構いなく」

 母親の気遣いに対して、瀬野さんがそう答える。

「……あっ」

 この写真……橘?

「どうした?藤嶺」

「……この写真、橘さんです」

 母親は娘の事件のことで精神的に参ってしまった、と聞いていた。
 でもそんなのは、当たり前だと思う。……大切な娘を殺されたんだ。悲しいに決まっている。

「橘さん、楽しそうに笑ってる……」

 こんな笑顔を、殺される前は何回も見た。 俺はその橘さんの笑顔が本当に好きだったんだ。
 橘さんの笑顔は、クラスのみんなを笑顔にした。 
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