「おかーたま。ちょうちょ」

「本当ね、アンネ、走ると危ないわよ」

トコトコと森の中を走るアンネの後を追いかけ、私は笑顔で抱きあげる。

「ちょうちょ、ちょうちょ」

ヒラヒラと緑の中に飛ぶ、黄色い蝶に手を伸ばすアンネがとても愛しい。

一歳三か月という月齢ながら、単語を話し魔法を操るアンネ。
傷ついたリスにアンネが触れた途端、傷が治ったことに驚きを隠せなかった。

二年前、幻のように現れたアレックスは、本当に森の瘴気をなくし、町に平和をもたらしてくれた。
宝石がどのようなものだったかは誰も知らないし、忽然と姿を消した彼に、初めは街の人も話題にしていたが、私のお腹が大きくなるにつれ、誰も話題にしなくなった。

夫に逃げられたとか、あの森の瘴気を取り払うために命を落としたとか、いろいろなうわさがあるのは知っているが、私はどれについても否定も肯定もしていない。